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一般的な風邪という症状は、何千年も前から医学に知られているが、これまでに風邪の根本的な治療薬は得られていなかった。しかし、最近の新たな研究によって、これが実現するかもしれない。

一般的な風邪の症状は、大人で年に数回程度のペースで現れ、子供ではもっと頻繁に起こる。

今のところ、風邪を防ぐ方法というのは知られておらず、一旦感染すると治療する方法もない。

医学が高度に進歩した現在でも、風邪に対抗する方法の開発には成功していない。我々にできる処置は、風邪の症状を和らげて、過ぎるのを待つことだけだ。


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どうして風邪の治療は難しいのか?



風邪の治療薬開発が難しい理由は主に二つある。一つ目の理由は、原因が一つではないということだ。風邪の原因として最も一般的なのは、ライノウイルスだが、これには数百種類の変異体が知られている。この多様性がワクチンの開発を不可能にし、免疫系の働きを邪魔している。

二つ目は、ウイルスの進化が早いことだ。もし我々がワクチンを開発したとしても、ライノウイルスはすぐに耐性を獲得してしまうだろう。

風邪に対する対処法は多くの人にとって重要だが、特に喘息などの気管支の病気を持つ人々にとっては重症化する危険があり、有効な治療法が求められている。


風邪の治療薬に向けた新しいアプローチ




そこで今回の研究を行った研究者らは、マラリア寄生虫がもつたんぱく質に対する化合物に最初に着目した。彼らは二つの候補化合物を発見し、これらを組み合わせて使うことでより有効性が増すことを見出した。

彼らは先進技術を用いて、この二つの化合物を統合し、人間の細胞がもつ酵素N-myristoyltransferase(NMT)の働きを阻害する新たな化合物を開発した。

ウイルスは、人の細胞のNMTを利用することで、自らの遺伝情報を保護するカプシドと呼ばれる殻を作り出す。NMTは、風邪のウイルスによって生存や増殖、拡大に必要不可欠なものなのだ。

一般的な風邪のウイルスのすべての株がNMTに依存しており、NMTを阻害することですべての風邪ウイルスの活動を防ぐことができるかもしれない。さらに、類似したウイルスによる手足口病やポリオなどの感染症を防げる可能性もある。

また、ウイルスではなくヒトのたんぱく質を標的にするため、ウイルス変異による耐性の獲得も起こりにくいかもしれない。

この研究は、Nature Chemistry誌に掲載された。

この薬はIMP-1088と名付けられ、研究者らは大きな期待を寄せている。「このような薬は感染の初期に大変有効であり、現在我々は肺から速やかに吸入できるタイプの開発を行っています」とEd Tate教授は語る。

これまでにもヒト細胞を標的にした薬はあったものの、IMP-1088は既存薬に比べて活性が100倍以上高いという。

また、初期のNMT阻害薬は高い毒性の問題もあったが、今回の新薬は、ヒトの培養細胞にダメージを与えなかった。しかし、もちろん今後の研究によって、薬の安全性を確認する必要がある。

また、Tate教授によれば、薬の副作用を最小化するために、薬の適用は、ほかの原因による似たような症状ではなく、風邪ウイルスが原因の場合に限られる必要があるという。

まだ実用的な段階とは言えないものの、この研究によって我々は風邪の治療薬の実現に一歩近づいたのかもしれない。








参考:The common cold: Could we be close to a cure?