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へその緒から採取された幹細胞による治療法が、多発性硬化症(MS)患者の身体障害と脳の損傷を安全かつ長期的に改善することが臨床試験によって示された。

この研究は、Journal of Translational Medicine誌に発表された。

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MSと幹細胞療法



現在のMSに対する治療では、再発の頻度を減らし、病気の進行を遅くすることは可能だが、傷ついた神経細胞と神経を保護するミエリン鞘を回復させることはできない。

間葉系幹細胞は、成人の幹細胞で、臍帯、骨髄、脂肪などの複数の組織に存在する。これらの細胞が成熟することで、骨、軟骨、筋肉、脂肪組織細胞などに変化する。

間葉系幹細胞を用いることで、免疫によって引き起こされる病気を防げるかもしれないと考えられている。特に、へその緒に由来する間葉系幹細胞は、高い成長力と増殖力を持ち、成長因子の産生を増やし、他の間葉系幹細胞に比べて高い治療効果を持っている。

様々な臨床試験によって、間葉系幹細胞を用いることでMSを含む免疫と炎症による疾患を安全に治療できる可能性が示されてきた。

今回の研究を行ったチームも、過去に間葉系幹細胞が認知機能と運動機能を改善することを報告している。

胎盤と臍帯の間葉系幹細胞を使った最近の結果では、患者の身体障害の軽減に加えて、軽度から中程度の副作用が報告されていた。


へその緒に由来する間葉系幹細胞によるMS治療の効果と安全性



パナマのStem Cell Instituteの研究者らは、へその緒由来の間葉系幹細胞によるMS治療の有効性と安全性を試験するため、一年間に及ぶ第1/2相臨床試験(NCT02034188)を完了した。

この試験は、20人のMS患者(平均年齢41歳、60%が女性)を対象に行われた。被験者のうち15人は再発寛解型MSの患者で、4人は一次性進行型MSの患者、1人は二次性進行型MSの患者であった。病気を患った平均期間は7.7年であった。

被験者は、へその緒由来間葉系幹細胞の静脈注射を7日間で7回受けた。治療の有効性は、開始時点と治療から一か月後および一年後に評価された。

MRIによる脳の損傷のモニターと、EDSSスコアに基づいた身体障害によって治療効果の評価が行われた。また、神経機能、手の機能、運動、および生活の質に関するMSテストも行われた。

患者から深刻な副作用が報告されることはなかった。治療に関連するとみられる軽い副作用は、主に頭痛と疲れであった。

治療効果は、治療から一か月後に最も明白に表れた。身体障害度、利き側でない手の機能、平均歩行時間、および膀胱、腸、性的機能で改善が見られた。患者からは、生活の質の改善も報告された。

治療から一年後のMRI検査では、18人中15人の患者で損傷が非活動的であることが明らかになった。一人の患者は、脳の損傷部位がほぼ完全に消失しており、研究チームは「この発見は特に心強いものだ」と述べている。

治療一年後の時点で、身体障害度の改善は依然として存在し、歩行機能と介助なしの作業の改善として現れた。


まとめ



研究チームは論文で、「へその緒の間葉系幹細胞の潜在的な長期に渡る効果は、治療から一か月後、そしていくつかの点では一年後も継続しており、現在のMS治療薬が毎日あるいは毎週投与されなければならないこととは好対照である」と書いた。

この治療法の安全性も、従来のMS治療法と比べた時の利点であるとチームは述べた。

彼らは、「間葉系幹細胞の静脈注射によるMSの治療は、安全で、潜在的な治療効果はさらに研究されるべきだ」と結論付けた。






参考:Treatment with Umbilical Cord Stem Cells Safe with Sustained Benefits for MS, Trial Shows