nose_1


トルコでの研究により、多発性硬化症(MS)患者では、病気の初期段階から普通よりも匂いの感覚が鈍くなりうることが報告された。

この報告は、MS患者での嗅覚の問題を指摘した過去の研究結果を支持している。また、疾患が長期に及んだり、再発が多い場合には嗅覚の問題も大きくなり、「MS疾患への中枢神経と嗅覚ネットワークのより大きな関与を反映している」と研究チームは述べた。

嗅覚神経で損傷が明白になることは稀なことから、このような問題は科学者の間で論争の的となっている。

この論文は、Multiple Sclerosis and Related Disorders誌で発表された。


バイオマーカーとしての嗅覚



匂いを嗅ぐ能力の低下や匂いに対する感じ方の変化は、MSの非運動症状のひとつだが、見落とされがちである。

匂いの感覚である嗅覚は、嗅覚神経のネットワークと様々な脳の部位(嗅球、嗅索、眼窩前頭皮質、島皮質、小脳)で制御されている。

嗅覚神経の大部分はMSで攻撃されるミエリンを持たないため、嗅覚は損傷されないと考えられてきた。しかし、最近の証拠により、従来想定されてきたよりも嗅覚ネットワークがMSに大きく関与していることが明らかになってきた。

研究により、パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患の初期段階において、嗅覚が損なわれるということが明らかになった。実際に、嗅覚障害が、神経変性疾患を診断するためのバイオマーカーとして使える可能性も示唆されている。


多発性硬化症と嗅覚機能の関連



しかしながら、MSでの嗅覚機能に関する臨床研究では、矛盾するいくつかの結果が報告されている。ある研究によれば、再発寛解型MSおよび一次性進行型MSの患者のうち、20%から40%で嗅覚障害が示唆されている。別の研究では、MSに関連する嗅覚の問題はないという報告もある。

この矛盾を解決するため、トルコの研究者らは、MSの期間と進行度および患者の認知機能と嗅覚の機能不全との間の関連を評価した。匂いの感覚はConnecticut Chemosensory Clinical Research Center olfactory testによって評価され、思考能力はMontreal Cognitive Assessmentによって評価された。

チームはイスタンブールのMS外来病院で、31人の大人のMS患者を5年間以上に渡って追跡、分析し、24人の健常人と比較を行った。嗅覚の問題を引き起こす可能性のあるMS以外の病気を持つ患者は除外された。

匂いを同定するテストでは、ピーナッツバター、石鹸、チョコレート、コーヒー、シナモン、防虫剤、ベビーパウダーなどの日常的な品が使われた。

その結果、MS患者のうち、特に病気の期間が長く、再発を良く起こす患者では、嗅覚テストの結果が健常者よりも悪いことが明らかになった。認知機能が高いほど嗅覚テストのスコアも高いという相関も見つかった。


嗅覚テストによる多発性硬化症のモニター



「我々の結果は、臨床上の重要な点を暗示しているかもしれません。それは、嗅覚テストがMS患者の身体障害の度合いとは関係のない認知機能不全を測るための方法になるかもしれないということです」と研究者らは論文で述べている。

患者の身体障害と匂いの感覚との間には相関は見られなかった。研究チームは、この結果はサンプルサイズが小さい、あるいは分析されたMS患者グループの身体障害レベルが低かったためである可能性もあると述べた。

注目すべきは、対象となったMS患者は疾患の初期段階であったにも関わらず、今回見つかった嗅覚の鈍化がこれまでの研究で見つかったよりも大きかったことだ。

「この研究は、まだ若く身体的障害の程度が軽い患者であっても、MSと嗅覚システムの関連、および認知機能と嗅覚機能の相関が存在する可能性を支持しています」と研究チームは結論付けた。

「嗅覚を評価することは、継時的な病気の進行を追跡する上で有用な代替的手法になるかもしれません」と彼らは付け加えた。






参考:Poorer Sense of Smell Can Be Evident Even in Early Stages of MS, Study Says