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酸素センサーとして働くタンパク質であるHIF-1αが免疫B細胞の活動を制御し、多発性硬化症などの自己免疫疾患で炎症を防いでいることが報告された。

この論文は、Nature Commjnications誌に掲載された。


B細胞で酸素センサータンパク質HIFが果たす役割



細胞は自信を守るメカニズムによって、危険な状況に対処している。危険な状況のひとつは、エネルギー産生に必要な酸素が低下した状況だ。

低酸素状態では、HIF(Hypoxia-inducible factors)と呼ばれるタンパク質が酸素センサーとして活性化される。HIFの役割はT細胞で広く研究されてきたが、B細胞での役割はあまり分かっていなかった。

ドイツのFriedrich Alexander Universityの研究チームは、B細胞ではHIFの一種であるHIF-2αレベルが非常に低い一方で、B細胞が活性化された時には別のサブタイプであるHIF-1αが増加することを発見した。

この発見をもとに、研究者らはHIFタンパク質のB細胞での役割を詳細に研究した。このために、彼らはB細胞でHIF-1αあるいはHIF-2αを欠損するように遺伝的に改変されたマウスを作成した。

HIF-2α欠損マウスでは大きな変化は見られず、B細胞で重要な役割を持たないことが示唆された。一方で、HIF-1α欠損マウスでは、炎症を抑える分子であるインターロイキン-10(IL-10)を産生する働きを持つB細胞が大きく減ることが明らかになった。


自己免疫反応を酸素センサータンパク質HIF-1αが制御する



IL-10は自己免疫疾患で炎症を制御する重要な因子なので、研究チームは関節リウマチと多発性硬化症でのHIF-1αの役割を追及した。

実験により、この酸素センサータンパク質がない場合には、自己免疫疾患がより早く進行することが発見された。この結果は、HIF-1αがB細胞の炎症抑制作用を制御していることを示している。

これまでB細胞は、自己免疫での炎症を引き起こす主要な存在と考えられてきた。しかしこの新たな発見は、HIF-1αがこの免疫反応を制御し、抑制することが可能だと示している。

研究を率いたAline Bozec教授はプレスリリースの中で、「HIFは基本的に、免疫細胞の一種であるBリンパ球に対して心理療法士のように働きます」と述べる。

「総合的に考えて、この研究は、低酸素に関連する転写因子であるHIF-1αが、B細胞でのIL-10の発現と自己免疫疾患での保護作用に果たす重要な機能を示していると言えます」と研究者らは書いている。

研究チームは、HIF-1αを活性化する薬剤を開発することで、IL-10を産生するB細胞の免疫制御能力を上昇させ、自己免疫疾患の予防と治療が可能かもしれないと示唆した。






参考:Oxygen Sensor Protein Can Regulate B-Cell Anti-inflammatory Response in MS, Study Shows