mouse_1


酸化ストレスに関わる酵素を阻害することで、神経細胞の損傷が軽減され、新たな神経細胞の形成が促進されることが多発性硬化症(MS)のモデル動物で示された。

さらに、神経細胞を保護するミエリン鞘を作り出す細胞を増やす効果も確認された。研究チームは、動物実験として進行型MSのモデルマウスを用いた。

この研究の論文は、NeuroReport誌に掲載された。


酸化ストレスと多発性硬化症



酸化ストレスは、体の中で発生する活性酸素と、それを消去する抗酸化系の間のバランスが崩れることで引き起こされる。酸化ストレスによって、免疫細胞による活性酸素の産生が促され、その活性酸素の毒性によって神経細胞の損傷やミエリン鞘が消失が起こる。

骨髄細胞は、活性酸素を産生する免疫細胞の一種だ。骨髄細胞が炎症を引き起こす時、ミエロペルオキシダーゼと呼ばれる強力な活性酸素産生酵素を放出する。

このミエロペルオキシダーゼの放出は細胞損傷につながるため、研究者らはこの酵素を阻害することで多発性硬化症に好ましい効果が得られるのではないかと仮説を立てた。

そこで、進行型MSのモデルマウスに対して、ミエロペルオキシダーゼの阻害薬であるN-アセチルリシルチロシルシステインアミドによる処置を行った。


酸化ストレスを防ぐとMS症状が緩和された



彼らはマウスを二つのグループに分け、一方はミエロペルオキシダーゼ阻害薬を、他方にはプラセボ薬を投与した。阻害薬は腹部に一日一回あるいは二回の注射によって行われ、プラセボ群には生理食塩水が注射された。

この実験によって、ミエロペルオキシダーゼ阻害薬はプラセボ薬に比べて、低い方の投与量でさえもマウスの疾患スコアを大きく減らすという重要な結果が見出された。

研究チームによれば、この結果は、ミエロペルオキシダーゼが進行型MSで見られるダメージに重要な役割を果たしているという考えを支持している。

また、研究チームは、マウスの脊髄におけるミエロペルオキシダーゼのレベルを分析した。マウスがMS症状を発症した際には、ミエロペルオキシダーゼのレベルは大きく上昇していたが、阻害薬の処理により、この上昇は止められた。

そして、ミエロペルオキシダーゼを阻害することは、酸化ストレスのレベルを下げるだけでなく、骨髄細胞の数も減らしていた。

神経細胞への損傷とミエリン鞘の消失はMSの特徴であるため、チームはこの阻害薬がMSを緩和するかどうかを検討したところ、実際に症状が緩和されることが確認された。

さらに、この阻害薬がMSマウスの神経細胞の形成を促進し、中枢神経でミエリン産生を行うオリゴデンドロサイトの再生を助けることも発見された。

「総合的に我々のデータが示唆することは、ミエロペルオキシダーゼを標的とすることが、進行型MSでの酸化傷害を減らし、神経機能を保全するための有望な治療のアプローチとなりうるということです」と研究チームは結論付けた。






参考:Inhibiting Oxidative Stress Enzyme Reduces Nerve Cell Damage in Mice with MS, Study Shows