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カナダでの研究により、カルネキシン(calnexin)と呼ばれるタンパク質が過剰になることで、多発性硬化症(MS)の患者の血液脳関門が壊される可能性が示された。

この発見は、MSでの脳の損傷を防ぐための新しい治療戦略につながるかもしれない。

この研究は、JCI Insight誌に論文が掲載された。


MSは、脳や脊髄で起こる自己免疫疾患で、T細胞と呼ばれる白血球の働きによってその活動が制御されている。活性化された時には、白血球が血液脳関門を通過して中枢神経へと侵入し、神経細胞を保護するミエリンが破壊される。これによって神経細胞が失われ、MSの症状が現れる。

血液脳関門の破壊は、MSを含む様々な病気が持つ特徴だ。血液脳関門が損傷された場合には、中枢神経への細胞や高分子の侵入を防ぐことができず、炎症や神経細胞のダメージが引き起こされる。


過剰なカルネキシンは多発性硬化症に関連している



カルネキシン(Calnexin)は、小胞体(ER)と呼ばれる細胞内の構造に存在するタンパク質で、ERでのタンパク質新生の品質管理に参加している。

MSにおけるカルネキシンの働きを調べるため、University of AlbertaとMcGill Universityの研究者らは、18人のMS患者の脳においてカルネキシンを分析した。

10人の健常者のサンプルと比較して、研究チームはMS患者の脳では内皮細胞に含まれるカルネキシンが予想外に高いことを発見した。内皮細胞は、血液脳関門を構成する主要な細胞だ。

さらにマウスによる動物実験によって、カルネキシンを持たないマウスはMS様の症状を全く示さないことが示された。これらのマウスの血液脳関門が、T細胞が中枢神経へと侵入するのを防いでいたのだ。

「これらの発見により、中枢神経の内皮細胞でのカルネキシンの発現と、MSで見られる神経炎症とミエリン鞘の破壊をもたらす病的過程の間の関連が特定された」と研究者らは論文で記述している。

研究に関わったMarek Michalak博士はプレスリリースの中で、「カルネキシンが血液脳関門の機能制御に関わっていることが明らかになりました。この血液脳関門は、壁のような働きを持ち、細胞や物質が血液から脳に移動することを制限しています。カルネキシンが過剰になると、この壁がT細胞により突破されてしまい、ミエリンの破壊が起こるのです」と述べた。

研究グループは今、カルネキシンの活性を制御するための戦略を開発しようとしている。

論文の共著者であるLuis B. Agellon博士は、「我々はこの刺激的な発見によって、カルネキシンが重要なMS治療の標的として同定された考えています。これからの挑戦は、このタンパク質が血液脳関門の形成にどのように関わっているかを正確に明らかにすることです。もし詳細なメカニズムを解明できれば、その機能を制御することでMS発症への耐性を得られるかもしれません」と結論付けた。

カナダはMSの発症率が最も高い地域の一つで、340人に一人のカナダ人がこの病気にかかっていると推定されている。





参考:High Levels of Protein Can Disrupt Blood-Brain Barrier in MS, Study Finds