神経細胞


多発性硬化症は、筋肉の弱化、視覚障害、麻痺などの症状が出る自己免疫疾患だ。今のところ、治療は症状の緩和を中心としているが、根本的な治療に向けた研究が続けられている。


多発性硬化症(MS)の根本的な原因は未解明であるが、一つの特徴として神経細胞の脱ミエリン化がある。

この脱ミエリン化のプロセスでは、免疫系が神経細胞を保護するミエリンを攻撃して損傷させる。この損傷の結果、神経細胞の間のシグナル伝達が妨害され、視覚や筋肉での症状が現れる。したがって、MSの研究者らが挑戦する目標の一つは、効率的に再ミエリン化を促す方法を探すことである。


英国のVeronique Miron博士らの研究チームは、以前の研究によって、activin-Aと呼ばれるタンパク質が再ミエリン化に重要な役割を果たしていることを突き止め、再ミエリン化研究におけるブレークスルーを起こした。

しかし、その時点ではactivin-Aによる再ミエリン化のメカニズムは不明であった。そこで研究チームは、今回、Acta Neuropathologica誌に発表した論文で、このタンパク質がミエリンの回復プロセスのスイッチをオンにするメカニズムを発見したと報告した。


新たなミエリン形成を促す



Miron博士とそのチームは、activin-Aが動物個体や組織中でミエリン産生を促進するメカニズムを研究した。

研究チームは、オリゴデンドロサイトと呼ばれるミエリンを作り出す細胞において、activin受容体2a(Acvr2a)と呼ばれるタンパク質が存在することが、ミエリンの産生に重要であることを見出した。

進行型MS患者の組織サンプルを観察することで、Miron博士のチームは、再ミエリン化が起こる神経組織では、Acvr2aが多く存在することを見出した。一方で、ミエリンの回復の兆候がない組織ではAcvr2aレベルが低くなっていた。

Activin-Aは、Acvr2aに結合することによって、オリゴデンドロサイトにシグナルを伝え、神経軸索のミエリンが損傷した部位で再ミエリン化を開始させることも発見された。

Miron博士は、「我々がこのActivin-Aと呼ばれるタンパク質を発見した当時は、再ミエリン化でこのタンパク質が果たす役割については良く分かっていませんでした。今では、このタンパク質が特定の受容体に結合することによって、ミエリン回復を引き起こすことが明らかにされました。」と述べる。

再ミエリン化は、MSの進行を遅くするために重要であり、進行を止めることすら可能かもしれない。Miron博士は、今回の発見が新薬開発につながる可能性もあると指摘した。

これが本当に興奮するような発見である理由は、この受容体を標的とした薬の開発が可能になることです。もしそうなれば、MSによって神経細胞がダメージを受けた後でも、新たなミエリンを作り出すことが可能になるでしょう。

-Veronique Miron博士





参考:Brain-repairing protein may lead to new MS drugs