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イギリスで行われた臨床試験で、血友病の遺伝子治療についての衝撃的な結果が報告された。これによって、最も一般的な型の血友病に対する治療法が大きく前進するかもしれない。


この臨床試験では、血友病Aの患者に対して失われた遺伝子を導入する治療が一度だけ行われた。今回のNew England Journal of Medicine誌に掲載された論文では、遺伝子治療の一年後に患者の血液凝固因子が通常のレベルとなり、出血が大幅に減少したことが報告された。

論文の共著者であるK. John. Pasi教授は、「我々は予想をはるかに超えるショッキングな結果を目撃した」という。

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血友病は、血液が凝固しにくくなる遺伝的な病気で、血液凝固因子を制御する遺伝子が欠損することによって起こる。

凝固因子が減れば、それだけ出血が起こりやすくなり、軽いけがで大量の出血を起こしたり、関節などで内出血が自然と引き起こされる結果になる。

関節での出血は、進行性の損傷、関節炎や痛みを引き起こす。頭部で出血が起これば、痙攣や麻痺につながることもある。出血が止まらなかったり、あるいは脳などの重要な臓器で起これば、死に至ることもある。


遺伝子の欠損を直せば、血友病を根本的に治療できる



血友病は、基本的に男性で発症し、二つのタイプがある。血友病Aは最も一般的なタイプで、因子VIIIの欠損によって起こる。一方、血友病Bは因子IXの欠損によって起こる。

血友病Aは、血友病Bよりも四倍ほど患者が多く、男性5000人に一人の割合で起こる。世界中には、40万人の血友病患者がいると推定されている。

現在、血友病の根本的な治療法は存在しない。効果的な対処療法は存在するが、費用が高く、出血を防ぐために週に数回の注射を一生続ける必要がある。

今回の臨床試験では、イギリスの13人の血友病A患者に対して、因子VIIIの遺伝子を導入することが試みられた。


驚くべき結果



試験の結果、遺伝子治療を受けて一年間、13人全員が以前の治療を中止することができた。また、11人は、通常、あるいは通常に近いレベルの凝固因子を示した。

Pasi教授は、「開始時点では、我々は5%の改善でも大きな成果であると考えていたので、実際は通常あるいは通常に近いレベルの凝固因子が見られ、出血が劇的に減ったというのは、ただただ驚くべきことだ。」と述べた。

付属する社説の中で、オランダUniversity Hospital UtrechtのH. Marijke van den Berg博士は、この遺伝子治療の臨床試験の意義について議論している。

博士は最近、血友病が「凝固因子の濃縮液が豊富にあり、遺伝子治療が現実のものとなる時代」に近づいているのを見てきた。

臨床試験について、博士は「得られた水準は印象的だが、患者間での大きなばらつきについては解明されなければいけない」と述べている。


「出血のない人生」への展望



van den Berg博士は、検討されなければいけない点のひとつとして、適切な投与量を予想することが可能かどうか、あるいは投与量を下げるような前処置が可能かどうかを挙げた。

また、「今回集められた患者は、AAV陰性、肝炎がない、因子VIII阻害因子陰性という条件を満たす人に限られたため、ほとんどの血友病患者はまだ遺伝子治療の恩恵をうけることができない」とvan den Berg博士は指摘する。

しかしながら、この治療が完成されれば、血友病患者は出血と致命的な副作用のない生活を望めるとも博士は示唆した。

さらに、遺伝子治療は根本的な治療であるため、発展途上国のように凝固剤が容易に手に入らない地域ではより大きな違いを生み出すかもしれないと彼女は暗示した。

我々は本当に今、血友病の人々への治療を変える可能性をつかんでいる。これを使うことで、今は一日おきに注射を打たなければいけない治療が、一度きりの処置で済むようになる。これはとてもエキサイティングだ。
- K. John Pasi教授





【参考記事】
Hemophilia cure? Gene therapy trial shows dramatic results (Medical News Today)