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多発性硬化症では、運動することで運動能力を維持できることが知られているが、実はそれ以上の効果があるかもしれない。新たな研究によって、筋力トレーニングが病気の進行を遅らせる可能性が報告された。


Aarhus大学の研究者らは、週二回の筋力トレーニングを半年間続けた結果、再発寛解型多発性硬化症(relapsing-remitting multiple sclerosis, RRMS)の患者の脳委縮が防止されることを発見した。一部の患者では、特定の脳の領域の容積が増加する場合も見られた。この発見は、Multiple Sclerosis Journal誌に発表された。


多発性硬化症


多発性硬化症(Multiple Sclerosis, MS)は、免疫系が誤って中枢神経の神経細胞を覆うミエリンと呼ばれる構造を攻撃することで起こる。

その結果、神経線維が損傷あるいは破壊され、神経の信号伝達がうまく行かなくなる。症状には様々あり、筋肉の弱化、視覚とバランスの喪失、歩行の困難などがある。

再発寛解型MSは、最も多く見られるMSで、症状の出現と消失が繰り返される。


運動と脳委縮


過去の研究によって、運動がMS症状を軽減することが報告されていた。例えば、2012年のレビューでは、運動は「筋力、有酸素能力、歩行機能に有益であり、疲労、歩様、バランス、生活の質をMS患者で改善するかもしれない」と結論付けている。

今回の研究では、運動することが脳委縮にも良い影響を与えるかどうかが研究された。

脳委縮は、脳のサイズの減少と神経細胞の喪失で定義され、MS進行の特徴となっている。

研究チームは、投薬治療を受けている35人のRRMS患者を対象に、週二回の筋力トレーニングを行うグループ18人と通常の生活を行うグループ17人を無作為に振り分けた。


六か月間の試験の前後で、MRIによってそれぞれの患者の脳容量と皮質の厚さが計測された。

その結果、筋力トレーニングを行ったグループでは、運動をしなかったグループに比べて脳委縮が防止されることが明らかになった。

研究を主導したDalgas教授は、
MS患者では、脳は通常よりも早く委縮する。これは薬で対抗することもできるが、我々の結果では、投薬を受けている患者に運動をさせることで、委縮をさらに最小化できる傾向がみられた。さらに、いくつかの小さな脳の領域が、運動によって成長しはじめる現象もみられた。
と説明した。


まとめ


これまでの研究によってMS患者に対する運動の良い効果は報告されてきたが、運動が実際に脳の委縮を抑制する事実は、今回の研究により初めて明らかになった。

運動が脳委縮を抑制するメカニズムは明らかでないが、研究チームは今後この点について解明したいとしている。

今回の研究は、MSにおいて運動は今まで考えられていた以上に重要なサプリメントであることが示唆された。ただし、研究チームは、このような筋力トレーニングは医師の指導の下で行われるべきだと警告した。





【論文】
Can resistance training impact MRI outcomes in relapsing-remitting multiple sclerosis? (Multiple Sclerosis Journal, 2017)

【参考記事】
Multiple sclerosis: Resistance trainng may reduce brain atrophy (Medical News Today)