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多発性硬化症の状態を知るための新たなバイオマーカーが発見された。ある神経のタンパク質を簡単な血液検査で測定することで、症状の再発を予想したり、治療効果を確認できるかもしれない。


ノルウェイのBergen大学の研究チームは、neurofilament light chain (NFL)と呼ばれるタンパク質が多発性硬化症(Multiple Sclerosis, MS)のバイオマーカーとして働く可能性を突き止め、Neurology: Neuroimmunology & Neuroinflammation誌上で発表した。

彼らは、80人を超える再発寛解型MS患者について、血液検査の結果とMRIやその他の検査結果とを比較した。

MSの症状は患者によって大きく異なっており、病気の進行の様子や治療効果などを予測することは困難だ。MSのバイオマーカーを特定することで、これらの予測を行いやすくなると期待される。

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MS症状と血液検査の重要性


MSは、免疫系が脳や脊髄などの中枢神経を攻撃することで引き起こされる。

免疫系の攻撃は、神経細胞の表面にあるミエリン鞘を破壊し、神経の信号伝達を乱す。この攻撃がどの部位で起こるかによって症状は異なり、人によって、あるいは同じ人でも時によって違った症状が現れる。

再発寛解型MSでは、症状は予測不可能な形で再発と消失を繰り返す。進行型MSでは、持続的に症状が現われ、だんだんと悪化していく。症状には、視覚障害、疲労、筋肉の弱化、バランスと運動の障害、痺れ、痛み、震え、発音障害、聴覚障害、記憶障害などが含まれる。

世界では、250万人のMS患者がいると推定されている。

今回、研究チームが着目したタンパク質NFLは、神経細胞が傷ついた際に脳脊髄液中に放出される。脳脊髄液中のNFLの増加は、神経が傷害を受けるMSやアルツハイマー病、運動ニューロン病などで見られる。

ただし、脳脊髄液の採取は侵襲性が高いことから、複数回の採取や長期間にわたる追跡に適していない。一方で、血液の採取は容易であり、侵襲性も低い。そして、低い濃度のNFLは血液中にも存在しており、研究チームはこれを測定することでMS症状の予測が可能ではないかと仮説を立てた。

彼らは、85人の再発寛解型MS患者を集め、血中NFLとMS症状の関係を2年間に渡って調査した。この間、患者らは6か月間は何も治療を受けず、18か月間はインターフェロン‐β 1aによる治療を受けた。この治療は、再発を減らし、脳の病変を遅らせるためのものだ。


高いNFL値は、T1およびT2病変に関連する


二年間の間、被験者には障害の度合いの評価やMRIによる検査が行われた。血液検査は、調査開始から3、6、12、24か月の時点で行われ、NFLの値などが測定された。

研究の結果、NFLが高い値を示した時には、MRI検査で脳にT1およびT2病変と呼ばれる損傷が起こっていることが明らかになった。

血中NFLレベルは、T1病変を起こした人では37.3 pg/mLだったのに対し、そうでない人では28 pg/mLに留まった。

T2病変を起こした人のNFLは、37.3 pg/mLであり、一方で病変を起こしていない人は27.7 pg/mLであった。

T1およびT2病変を起こした人のNFL値の上昇は三か月間続き、その後それらの患者には、インターフェロン‐β 1aによる治療が開始された。

統計的な手法により、NFL値が10 pg/mL上昇する毎に、T1病変のリスクは48%上昇し、T2病変のリスクは62%上昇することが明らかになった。


CHI3L1はMSのバイオマーカーにならない


研究チームは、他のバイオマーカー候補としてchitinase 3-like 1(CHI3L1)と呼ばれるタンパク質について検討した。CHI3L1は、いくつかの炎症症状のバイオマーカーとして利用できることが知られていた。

しかしながら、今回の研究ではCHI3L1は、MRIでの検査結果やインターフェロン‐β 1aによる治療とは関連していないという結果が得られた。


まとめ


今回の研究により、血中NFL値が高い時には病気が活性化しており、一方でインターフェロン‐β 1aによる治療でNFL値が減少することが明らかになった。

この発見により、MRIよりも簡便な血液検査でMSの病状や治療効果を測ることができるようになるかもしれない。





【論文】
Neurofilament light chain predicts disease activity in relapsing-remitting MS (Neurology: Neuroimmunology & Neuroinflammation)

【参考記事】
MS: Blood test offers new way to monitor disease activity (Medical News Today)