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インフルエンザは誰にとっても避けたいものだが、特に多発性硬化症の人々において、インフルエンザは病気を再発させることがある。新たな研究がこのメカニズムを明らかにした。


多発性硬化症


多発性硬化症(Multiple Sclerosis, MS)は、異常な免疫反応によって起こる慢性疾患で、中枢神経のミエリン鞘が免疫系による攻撃を受けることで発症する。

ミエリン鞘が傷つくと、その内側にある神経細胞の機能が損なわれ、脳や脊髄での信号伝達が影響を受ける。MSの症状として、痺れ、体の痛み、筋肉の弱化、運動機能の障害などが現れる。再発寛解型MSは、最も広く見られるMSで、症状の発現と消失が繰り返し起こる。

以前の研究により、インフルエンザや他の呼吸器での感染症がMS患者の症状を再発させるリスクを高めることが報告されていたが、そのメカニズムは不明であった。

そこで、Illinois大学の研究者らは、遺伝的に脳や脊髄で免疫系による攻撃が起こるマウスをMSモデルとして、このメカニズムを研究した。この成果は、今年八月にPNAS誌に発表された。

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インフルエンザはグリア細胞を活性化する


研究チームは、MSモデルマウスをインフルエンザAウイルスに感染させ、ウイルスに対する反応を観察した。

その結果、インフルエンザ感染したマウスの何匹かでは、人間のMSに似た症状が現れた。しかし、インフルエンザウイルスは、マウスの脳内からは検出されなかった。

人間の場合、呼吸器の感染症から一週間か二週間以内に、27%から42%の患者がMSの再発を経験するという。今回のマウスでも同様の時間スケールでMSの症状が現れた。

面白いことに、インフルエンザ感染によってマウスの脳内では、グリア細胞が活性化することが発見された。

グリア細胞の主な役割は、中枢神経の神経細胞をサポートすることだが、同時にグリア細胞は免疫細胞の働きも助けていることが過去の研究により知られている。

したがって、グリア細胞が活性化されることで、免疫細胞が脳や脊髄へと移行し始め、MSの症状が再発するのではないかと考えられる。


ケモカインの役割


研究チームは、ケモカインと呼ばれる分子がグリア細胞と免疫細胞の間のシグナル伝達に関わっているのではないかと仮説を立てた。

そして実際に、ケモカインの一種であるCXCL5が、インフルエンザ感染したマウスでは上昇していることを突き止めた。

人間の場合でも、MS症状が再発する際にはCXCL5が脳や脊髄で上昇することが最近の研究により報告されている。


まとめ


呼吸器の感染症でMSが再発するメカニズムは、また詳細に解明されたわけではないが、今回の研究により解明に一歩近づいたと言える。

MS症状の再発は、MSの進行を早めるのではないかと考えられており、再発を招く環境因子の特定が重要である。

もし、早期治療によりMSの再発を50%防ぐことができれば、理論的には患者の持続的な機能喪失を遅らせることができると研究者は述べた。





【論文】
Influenza infection triggers disease in a genetic model of experimental autoimmune encephalomyelitis (PNAS)

【参考記事】
Why does the flu trigger MS relapse? Study investigates (Medical News Today)