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動物実験により、腸内細菌が多発性硬化症を引き起こす可能性が示唆された。多発性硬化症の遺伝的リスクを持つ人々において、若い頃の腸内のバクテリアの変化が、多発性硬化症を発症する引き金となったり、その症状の進行を早めたりするかもしれない。


新たな研究によって、腸内のバクテリアの変化と多発性硬化症(Multiple Screlosis, MS)のリスク遺伝子が協調して病気を引き起こすメカニズムがPNAS誌に報告された。また、MS研究のためのユニークなモデルマウスの開発も合わせて発表された。


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多発性硬化症


多発性硬化症(MS)は、長期間にわたる自己免疫疾患で、中枢神経の健康な組織を免疫系が攻撃することで脳や脊髄および視神経の機能が損なわれる。

免疫系による攻撃によって、神経の信号伝達が乱れ、手足の動きや知覚に影響が出る。

MSには多様な症状があり、それらは中枢神経の攻撃を受けた部位やその程度に依存している。症状としては、視力の低下や喪失、体のバランスを取れなくなる、震え、極度の疲れ、痺れ、不明瞭な発音、麻痺、集中力や記憶力の低下などがある。

多くのMS患者は20代から50代で症状が現れ、男性よりも女性に患者が多い。


多発性硬化症の原因


MSの発症メカニズムについては正確にはわかっていない。しかし、研究者らは免疫系がどのように炎症を引き起こして神経細胞のミエリン鞘を攻撃するのか、動物モデルを使って多くの手がかりを得てきた。

一部の研究者は、腸内のバクテリアがMSに果たす役割について研究を展開している。MS患者では、腸内細菌の変化がしばしば観察されるが、これが病気の発症にどのように関連しているのかは不明であった。


多発性硬化症のモデルマウスの開発


この謎を解明するため、Rutgers-Robert Wood Johnson Medical Schoolの研究者らは、遺伝的に改変されたマウスを独自開発し、MSを高い確率で発症するようにした。彼らは、人間のMSに関連する遺伝子をマウスに導入することで、これを実現した。

このMSモデルマウスは、細菌の存在しない環境ではMSを発症することはなかったが、通常の状態、つまり細菌が存在する環境に置くと、人間と非常に似通ったMSの症状を示した。

このモデルマウスは、腸における炎症を起こしていたことから、研究チームは腸の細菌がMS様の症状を引き起こしたのではないかと考えた。

研究チームはさらに、若いマウスのほうがよりMSを発症しやすいことを発見した。これは、腸内細菌の変化やMSリスク遺伝子が協調して働きやすい年齢が存在することを示唆している。

また、このモデルマウスの若い個体では、Foxp3+Treg細胞の減少と、E3ユビキチンリガーゼの発現の低下が観察された。これらの細胞とタンパク質は、自己免疫疾患からの保護の役割を担っており、モデルマウスのMS発症メカニズムに関連するかもしれない。

今後の研究方針として、研究者らはいかに害のあるバクテリアの株を取り除くかが重要と考えている。これにより、病気の進行を遅らせることができるかもしれない。実際に、今回の研究によっていくつかの有害なバクテリア株の候補が特定されている。





【論文】
Gut dysbiosis breaks immunological tolerance toward the central nervous system during young adulthood (PNAS)

【参考記事】
Study shows how gut bacteria may trigger MS (Medical News Today)