brain_1


脳腫瘍の一種である神経膠芽腫(glioblastoma)は、治療が難しく、予後が悪いことで有名だ。新たな研究によって、神経膠芽腫の増殖を止める方法が見つかったかもしれない。Telomeric repeat binding factor 1 (TRF1)と呼ばれるタンパク質を阻害することで、マウスおよびヒトの神経膠芽腫の増殖と分裂を止められることが発表された。


神経膠芽腫


American Brain Tumor Associationによれば、神経膠芽腫は原発性脳腫瘍の15.4%を占める。早い増殖と治療の難しさから、神経膠芽腫は最も致死率の高い脳腫瘍のひとつだ。抗がん剤テモゾラミドと放射線による複合療法を受けた患者の生存期間の中央値は、14.6か月に留まっている。


SPONSORED LINK

TRF1を阻害することで神経膠芽腫の増殖が遅くなる


神経膠芽腫は、樹状細胞と呼ばれる細胞から発生する。このがんは、がん組織を再生させるための幹細胞を持っており、これが治療を難しくさせるひとつの要因である。

スペインの研究者らは、この幹細胞がTRF1というタンパク質を豊富に含んでいることに着目した。TRF1はShelterinと呼ばれるタンパク質複合体を形成し、染色体の末端(テロメア)を保護する役割を果たしている。加えて、TRF1はがん細胞が再生する能力にも重要な役割を果たしている。

これらの背景から、研究者らはTRF1の機能を阻害することが、がん細胞の増殖にどのように影響するかを研究した。

マウスモデルにおいて、神経膠芽腫が形成される際にTRF1を取り除いておくと、腫瘍の増殖が遅くなり、マウスの生存率も80%増加することが発見された。また、すでに形成された神経膠芽腫のTRF1を阻害した場合には、マウスの生存率は30%増加した。

このがん細胞増殖の抑制を引き起こすメカニズムとして、TRF1を阻害するとテロメアのDNAが傷つくことで、細胞増殖が抑制されていることが明らかになった。


TRF1が神経膠芽腫治療の標的となる可能性


次に研究チームは、TRF1の阻害剤が神経膠芽腫の治療薬となる可能性について模索した。

彼らは、独自開発したTRF1の阻害剤を用いて、ヒト由来の神経膠芽腫を播種したマウスモデルの治療が行えるか検討した。

TRF1阻害剤で処置されたマウスは、プラセボ薬で処置されたマウスに比べて、がん組織のTRF1レベルが80%減少しただけでなく、腫瘍の増殖速度と大きさが減少し、生存率が上昇した。

論文の中で、TRF1を阻害することによる副作用は、マウスでは発見されなかったと研究者らは述べている。

これらの結果を統合すると、TRF1阻害剤には神経膠芽腫の治療薬となる可能性があるかもしれない。研究チームは、TRF1阻害剤とテモゾラミドや放射線療法などの他の治療法を組み合わせた場合の効果について、今後検討していくという。





【論文】
Inhibition of TRF1 Telomere Protein Impairs Tumor Initiation and Progression in Glioblastoma Mouse Models and Patient-Derived Xenografts (Cancer Cell)

【参考記事】
Deadly brain tumors halted by blocking telomere protein (Medical News Today)