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最近、糖尿病研究者の間で、カロリー制限によってⅡ型糖尿病が治るかもしれないというアイデアが注目を集めている。 これまで、そのメカニズムは明らかでなかったが、新たな研究がメカニズムの一端を明らかにした。


糖尿病とは


世界的にⅡ型糖尿病の患者は増えており、この35年間で4倍近くになっている。1980年には患者数は1億800万人だったが、2014年には4億2200万人に増加している。日本には700万人の糖尿病患者がおり、糖尿病予備軍を含めると2000万人に達するとも推定されている。

糖尿病の多くはⅡ型糖尿病に分類され、血糖値を下げるインスリンが効きにくくなることが原因である。過剰な体重がこの病気の主な原因の一つとされる。


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糖尿病が可逆的である可能性


今年、BMJ誌に掲載された報告(論文1)では、体重減少によってⅡ型糖尿病が治療できる可能性が示唆されている。一般に糖尿病は進行性で治療不可能であると考えられてきたが、体重の管理によってより多くの患者が糖尿病の症状に苛まれることなく生きられるかもしれない。

また、別の論文では、40%の患者がカロリー制限によって糖尿病の寛解状態に至ったことが報告されている(論文2)。


糖尿病が可逆的になるメカニズム


今回の論文で、Yale大学の研究者らはラットを用いた動物実験でカロリー制限がいかに慢性的な糖尿病を可逆的にするのか、そのメカニズムを明らかにした(論文3)。

彼らは、Ⅱ型糖尿病のモデルラットを非常に低いカロリー摂取状態に置くことで、Ⅱ型糖尿病のマーカーがどのように変化するかを調査した。このモデルラットは、人間のⅡ型糖尿病の特徴である、非アルコール性脂肪肝、高脂血症、肥満、高インスリン血症の症状を備えている。

このモデルラットのカロリー摂取を三日間、四分の一に制限したところ、血中のグルコール濃度が顕著に減少した。

さらに研究チームは、自ら開発したpositional isotopomer NMR tracer analysisと呼ばれる手法を用いて、グルコース代謝に関わる細胞内経路の速度を計測し、以下の事実を発見した。

カロリー制限の影響:
  1. 乳酸とアミノ酸がグルコースに変換される速度が減少する。
  2. 肝臓のグリコーゲンがグルコースに変換される速度が減少する。
  3. 肝臓の脂肪が減少し、インスリン感受性が上昇する。

三日間のカロリー制限では、ラットの体重に大きな変化はなかったが、血中グルコース濃度は大きく下がった。グルコースの減少は、体重の減少と直接関係しているわけではなく、肝臓でのグルコーゲン代謝やアミノ酸および乳酸からの糖新生が抑制されるというメカニズムで起こっていることが明らかになった。


まとめ


カロリー制限による血中グルコース濃度の減少は、体重の減少に無関係な肝臓での糖代謝の変化で起こることが明らかにされた。この結果がヒトに適用されることで、Ⅱ型糖尿病の新たな治療標的の発見につながるかもしれない。今後は、人間で同様の現象がみられるかを確認し、そしてより詳細な分子機構の解明が重要だ。



論文
  1. Beating type 2 diabetes into remission (BMJ, 2017)
  2. Very-Low-Calorie Diet and 6 Months of Weight Stability in Type 2 Diabetes: Pathophysiologic Changes in Responders and Nonresponders (Diabetes Care, 2016)
  3. Mechanisms by which a Very-Low-Calorie Diet Reverses Hyperglycemia in a Rat Model of Type 2 Diabetes (Cell Metabolism, 2017)