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加齢による記憶と認知機能の低下を遺伝子治療によって防げる可能性が、動物を使った実験で初めて示唆された。スペインの研究グループは、Klothoと呼ばれる遺伝子を若いマウスの中枢神経に導入することで、年老いた時の認知機能の低下が防がれるという結果を得たことをMolecular Psychiatry誌上で報告した。

研究チームは、このKlothoを用いた遺伝子治療が認知症などの神経変性疾患の新しい治療となることを期待している。

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今回の研究の基礎として、Klothoは加齢に関連するメカニズムを制御していることが知られていた。そして研究の初期段階において、Klothoを過剰発現させた場合には寿命の増加が見られ、Klothoを阻害した場合には記憶と学習能力の減退が早まることが明らかになった。

そこで研究チームは、ウイルス由来の遺伝子改変法であるadeno-associated viral vector(AAV)を用いて、中枢神経にKlothoを導入すれば、認知機能低下の治療法となるのではないかと考えた。AAVは、ウイルスが動物の細胞に侵入して遺伝子を改変するという性質を利用した遺伝子改変法で、科学の世界では50年以上にわたって用いられている手法だ。最近では、これを遺伝子治療に応用する研究が盛んに進められている。

研究チームは、Klotho遺伝子を導入したAAVを若いマウスに一度注射するだけで、加齢後の認知機能の低下が抑制されることを確認した。また、同じ論文の中で、この遺伝子治療は年老いてから行った場合にも有効であることが示された。

研究チームは現在、米国の新興企業と連携して、Klothoによる遺伝子治療の前臨床試験をアルツハイマー病モデルマウスを用いて行っている。研究チームは、この研究が認知症およびアルツハイマー病や多発性硬化症などの神経変性疾患の新たな治療になることを期待している。また、遺伝子治療だけでなく、Klothoを標的とした有機小分子やペプチドなどに基づく創薬研究のきっかけになるかもしれない。



【論文】
Secreted alfa-Klotho isoform protects against age-dependent memory deficits (Molecular Psychiatry)

【参考記事】
Gene therapy may protect brain from age-related cognitive decline (Medical News Today)