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乳がんは米国において皮膚がんに次いで女性に多く見られるがんである。2017年には25万人が新たに乳がんを発症し、4万人がこの病気で死亡すると推定されている。乳がんによる死の原因の多くは、肺や骨などの他の臓器への転移によるものだ。

肥満は良く知られた乳がんのリスクファクターである。更年期を迎えた女性のうち、肥満の人は健康的な人に比べて20から40 %ほど乳がんにかかるリスクが大きいことが知られている。また、肥満は乳がんの転移を引き起こしやすく、生存率を下げることも知られていた。しかしながら、そのメカニズムについてはこれまで明らかにされてこなかった。

ドイツの研究グループは、あるサイトカインによってacetyl-CoA-carboxylase 1 (ACC1)の活性が低下することが、肥満によって乳がんの転移が促進されるメカニズムであることを突き止め、Cell Metabolism誌上で発表した。

ACC1は脂質合成に関与する酵素だが、これまでの研究でACC1が癌の転移に関与していることが知られていた。そこで研究チームは、マウス由来やがん患者から得た乳がん細胞のACC1活性を調査したところ、乳がん細胞、特に転移を起こしやすい細胞では、ACC1レベルが低下していることが明らかになった。

ACC1の低下は、acetyl-CoAの上昇につながり、それが特定の転写因子を活性化して乳がん細胞の転移を容易にしていた。さらなる研究で、肥満によってleptinとtransforming growth factor betaというサイトカインの分泌が促進され、これらのサイトカインがACC1を不活性化していることが明らかになった。また、leptinの働きを抗体を用いて阻害したところ、乳がん細胞おけるACC1の不活性化が起こらなくなり、がんの転移を防ぐことが明らかにされた。

今回の研究により、ACC1のシグナル経路を阻害することで、がん転移を防ぐことができる可能性が示された。このシグナル経路は、乳がんの転移や再発を防ぐための治療の標的となるかもしれない。

【論文】
Acetyl-CoA Carboxylase 1-Dependent Protein Acetylation Controls Breast Cancer Metastasis and Recurrence (Cell Metabolism)

【参考記事】
How does excess weight drive breast cancer? Study sheds light (Medical News Today)