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ヒ素は推理小説でおなじみの毒物だが、低用量かつ正しい方法で使えばがんの治療に役立つこともある。

Arsenic trioxide (三酸化二ヒ素、ATO)は血液のがんの一種である急性前骨髄性白血病(APL)の治療に用いられているが、新たな研究で悪性の脳腫瘍である多形グリア芽細胞種(GBM)の治療にも有効である可能性が浮上した。この成果は、Molecular Cancer Research誌に掲載された。

グリア芽細胞種の患者は、診断を受けてからの生存期間の中央値が15か月しかなく、この数字は過去数十年にわたってあまり改善されていない。新たな治療法の開発を目指して、Northwestern大学らの研究グループは、650種類の化学物質を網羅的に調べ、グリア芽細胞種のサブタイプに効果がある物質を探索した。

研究チームはATOを候補化合物として同定したが、ATOはすべてのGBMサブタイプに対して効果を持つわけではなかった。実際に、当初の臨床試験では、ATOのGBMへの有効性は否定された。しかし、結果を精査していくとATOはGBMのうちのある特定のサブタイプにだけ効果を示すことが明らかとなってきた。

今回の臨床試験では、ATOともう一つの抗がん剤であるtomozolomideを放射線療法と併用することでGBMを治療する方法が試験された。この治験により、グリア芽細胞種のうちである特定の遺伝的な特徴を持つものに対して、特にこの治療法が有効であることが明らかになった。つまり、グリア芽細胞種のうち、mesenchymal(間葉性)よりもproneural(前神経性)のものにATOが効果的であった。

ATOは、脳血液関門を通りぬけるために脳への投与が簡単である点や、低いコストなどの利点を持っており、新たな治療法となることが望まれる。

【論文】
Differential response of Glioma Stem Cells to Arsenic Trioxide Therapy is Regulated by MNK1 and mRNA Translation (Molecular Cancer Research)

【元記事】
Therapeutic form of arsenic is a potential treatment for deadly type of brain cancer (Science Daily)