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トラウマ誘発性異所性骨化(HO)は、四肢に重度の損傷を負った際に、その回復過程で異常な位置に骨が形成され、痛みや運動機能の低下を引き起こす。HOは、患者の生活の質(QOL)の低下を引き起こし、社会復帰の障害となるなど大きな問題となっている。

ラパマイシン(Rapamycin)は、すでに免疫抑制剤としてFDAにより認可された市販薬だが、今回新たな効果として、HOを防ぐことがラットの実験で示された。

現在のHOの治療法は、外科的手術によって異常な骨を取り除くことだが、それによって完全に元通りにはならず、患者は痛みや関節の制限された動きに苦しむことになる。

ラパマイシンは、通常、免疫抑制剤として臨床応用されるが、そのmTOR阻害活性から、副作用として血管新生の阻害効果も併せ持つ。研究チームは、この血管新生阻害が、骨形成を防ぐのではないかと仮説を立てた。

研究チームは、HOモデルラットを用いて、ラパマイシン処置の効果を検証した。このモデルラットは、爆風によるダメージや大腿部骨折、MRSA感染のモデルとして使われる。2.5 mg/kgのラパマイシンを2週間投与し、84日後の骨形成を調べたところ、ラパマイシン処理によって新たな骨形成が90 %抑えられることが明らかになった。同時に、骨形成のための前駆細胞の減少と、骨形成などに必要な遺伝子発現の低下が見られた。

今回の結果は、ラパマイシンのHO治療応用の可能性を示すものであり、HOのリスクに晒された傷痍軍人や一般市民のQOL向上に役立つことが期待される。ラパマイシンはすでにFDAに認可されていることもあり、迅速な実用化が望まれる。

【論文】
Inhibition of mammalian target of rapamycin signaling with rapamycin prevents trauma-induced heterotopic ossification (The American Journal of Pathology)

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Rapamycin treatment prevents crippling abnormal bone formation after severe limb injuries (Science Daily)