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コレステロールの生合成を阻害する薬剤がミエリンの再生を促進することが発見された。この発見は、多発性硬化症(MS)の新たな再生医療へとつながるかもしれない。

実際に、Convelo Therapeutics社からの発表によれば、同社はこの画期的な発見を基にした新薬開発に乗り出すという。

この研究論文は、Nature誌に掲載された。

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MSは脳の神経細胞のミエリンが破壊されることで起こる慢性的かつ進行性の疾患だ。

オリゴデンドロサイトと呼ばれる細胞は、破壊されたミエリンの再生に関わっている。ある種の薬剤は、オリゴデンドロサイトの幹細胞に働きかけ、この細胞への分化を促すことでミエリン再生を促進することがマウスを用いた実験で示されていた。

しかし、そのメカニズムは詳しく分かっていなかった。


コレステロール産生酵素を止めるとミエリン再生が起こる


Case Western Reserve Universityの研究チームは、この作用メカニズム解明に取り組んだ。

その結果、CYP51、TM7SF2、およびEBPと呼ばれるコレステロール産生に必要な酵素の働きが薬剤によって阻害されることで、オリゴデンドロサイトへの分化が起こることが明らかになった。

これらの酵素の働きを止めると、8,9-不飽和ステロールと呼ばれる分子が蓄積し、これが幹細胞の分化を引き起こしていた。

しかも、これまでに発見された同様の薬剤のうち、ほとんどすべてがこのメカニズムによって機能していた。

研究チームはまた、同様のメカニズムで作用する治療薬候補を新たに20種類以上発見した。

「ミエリン再生のためのほとんどすべての治療薬候補が同じ酵素を標的にしていたことは、この分野に新しいパラダイムをもたらします。現在進行中の創薬研究の方向性を変えるかもしれません」とPaul Tesar准教授は言う。

ヒトの脳組織を模倣した3次元細胞培養モデルを使って、彼らの発見した薬剤がミエリン再生を促すことも確認された。

「この研究は、新しい治療薬候補、新しい標的酵素、そして新しいコレステロールのバイオマーカーを提供します。これによってMSや関連する病気の薬の開発研究が加速されるでしょう」とAdams博士は述べる。


ミエリン再生によるMS治療薬の開発


この成果をもとにして、Convelo社はミエリン再生による薬剤開発を開始する。2016年に設立された同社の目指すものは、中枢神経の再生医療の実現だ。

「MSでは、治療薬は疾患修飾医薬に限られてきた。これらの薬は病気の進行を遅らせることはできるが、止めることはできない。我々の目標は中枢神経で直接働く薬を開発し、ミエリン再生を促進することで病気を止めたり回復させたりすることだ。」とConvelo社のDerrick Rossi社長は発表の中で述べた。

「私はConvelo社のチームを率いて、この画期的な発見を重要な治療薬開発につなげる仕事ができることに非常に興奮している」と彼はさらに述べている。

MSに加えて、ミエリン再生は心筋梗塞、脳震盪、アルツハイマー病などの加齢症にも有効な治療法となる可能性も期待される。





参考:New Therapy Candidates Could Provide Basis for Regenerative Medicines to Treat MS, Study Suggests