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遺伝子治療によって、Ⅱ型糖尿病と肥満を完全に治療できる可能性が動物実験で示された。

糖尿病は世界的に広く問題となっており、日本では糖尿病の患者数は1000万人とも推定されている(糖尿病ネットワーク)。

世界全体では、1980年から2014年の間に糖尿病の患者数は4倍に増加している(WHO)。

この病気に対する治療法が待ち望まれる中、スペインのUniversitat Autonoma de BarcelonaのFatima Bosch教授に率いられた研究チームは、ネズミを用いた実験で遺伝子治療によって糖尿病を完治させることに成功したと発表した。

この成果は、EMBO Molecular Medicine誌に掲載された。

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遺伝子治療によって糖尿病を治療する


Bosch教授らは、肥満とⅡ型糖尿病のモデルマウスをデザインした。一方のモデルマウスは食事によって、もう一つは遺伝的な改変によって作製された。

アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて、研究チームはFGF21(fibroblast growth factor 21)と呼ばれる遺伝子をマウスに導入した。

この遺伝子は、主要な代謝制御因子であるFGF21たんぱく質をコードしており、血中の糖を脂肪組織へと取り込むことを促進する。

この遺伝子を導入することで、肥満とⅡ型糖尿病のモデルマウスの体重が減少し、Ⅱ型糖尿病の主要なリスク因子であるインスリン抵抗性が減少した。

さらに、体重の減少に加えて、治療を受けたマウスでは脂肪の減少と脂肪組織での炎症の減少が見られた。

この遺伝子治療によって、モデルマウスの脂肪量、炎症および肝臓の線維化は完全に治癒し、副作用も見られなかった。一方で、遺伝子治療によってインスリン感受性は増加した。

これらの好ましい効果は、二つのモデルマウスの両方で観察された。また、FGF21を健康なマウスに投与することで、加齢による体重増加が抑制され、健康的な加齢につながることも発見された。

この遺伝子治療では、肝臓、脂肪、骨格筋の三種類の組織を標的とすることができる。

「これにより、治療の柔軟性が高まります。というのは、最も効果的な組織を毎回選ぶことができ、何らかの理由でその組織への導入が難しい場合には、他の組織へと適用することができるからです」とBosch博士は説明する。

「ある組織でFGF21たんぱく質が産生されれば、分泌されたたんぱく質が血流に乗って全身へと運ばれます」と彼女は付け加えた。


遺伝子治療のメリット


FGF21たんぱく質を従来の方法で投与しても、遺伝子治療のような効果は得られないと研究チームは説明する。

従来法の問題点として、薬剤を定期的に投与しなければならないことと、毒性が高まる可能性が挙げられる。

遺伝子治療を用いることで、副作用を減らし、一回の投与で何年にも渡ってマウスにFGF21たんぱく質を産生させることが可能となった。

「これは、単回投与の遺伝子治療によって、モデル動物の肥満とインスリン抵抗性を長期間に渡って治癒することに成功した最初の例です」と筆頭著者のVeronica Jimenez氏は語る。

「これらの結果は治療の効果と安全性を示している。次のステップはより大型の動物で治療の効果を試し、患者での臨床試験へと進む準備を整えることだ」とBosch博士は記した。

「今回の研究で行われた治療は、FGF21遺伝子によるⅡ型糖尿病と肥満などの治療を将来、臨床へと移行するための基礎となるだろう」とBosch博士は締めくくった。






参考:Type 2 diabetes, obesity may soon be reversed with gene therapy